子どもアクションプランでごみ減量!
社会科・4年生担任:中山和幸
「社会科では,よりよい社会をつくる担い手を育てたい。」私はこのような願いをもって社会科の学習づくりに臨んでいます。
よりよい社会をつくる担い手を育てるために,重要な力とは一体何でしょうか。そして,そのような力を育むことができる学習とは一体どのようなものなのでしょうか。
私は,その答えとして「社会を考察する力」と「よりよい社会を構想する力」を挙げたいと思います。また,それらの力を育てるためには,「社会的事象を考察する学習過程からよりよい社会の構想へとつながる学習過程」を意識した単元づくりが必要だと考えます。今回は,その「社会的事象を考察する過程からよりよい社会の構想へと移行していく学習過程」に焦点をあてた実践を紹介します。
(1)社会的事象を考察する学習過程

地域のリサイクル業者やクリーンセンターの見学(右写真
上)を通して,子どもたちは,ごみの処理にかかわる人々の様々な工夫や努力を目の当たりにしました。また,調査活動を行う中でパッカー車によるごみの回収が計画的に行われていることなども知りました。そのような子どもたちが次に目を向けたのは,和歌山市の環境部の方々の取り組みでした。
そこで和歌山市環境部の方に出前授業(右写真下)に来ていただき,お話を聞く中で子どもたちは次のようなことを知りました。 ①和歌山市では全国平均に比べて,一人あたりのごみ排出量が多いことが問題となっており,平成22年度から平成32年度の10年間で約30%のごみの減量を目標にしていること。
②その目標を達成するために「和歌山市ごみ減量アクションプラン」をつくったこと。
③前半の5年間で一人あたり120gのごみの減量に成功しており,後半の5年間で一人あたりさらに180gのごみの減量をする必要があること。
④家庭から出るごみの約47%が生ごみであるということ。
⑤ごみが増え続けると,大阪の埋め立て地がいっぱいになり,困ること。
そこで,子どもたちが抱いた思いが次のようなものでした。
埋め立て地がいっぱいになったら、どうしよう。ぼくたちもごみを減らすことに協力したいな。
このような思いを出発点として,その後の話し合いで決定したことが,ごみ減量子どもアクションプランをつくって、実践することでした。
このように子どもたちは,和歌山市のごみの現状や和歌山市の取り組みといった「社会的事象」を「考察」する中で,現在,和歌山市が直面している現実の問題を見出し,「その問題を解決するために自分たちにできることを考える」という「よりよい社会を構想する」ことを主とした学習過程に入っていきました。
(2)よりよい社会を構想する学習過程
①ごみ減量子どもアクションプランをつくろう。
子どもたちは,「問題の解決のために自分たちができること」の一つの答えとして,「ごみ減量子どもアクションプラン」をつくることにしました。
話し合いを通して,次のようなアクションプランをつくりました。
≪ごみ減量子どもアクションプラン≫
①マイ○○作戦(リデュース)
・マイバッグ,マイはしなど,マイ○○を使ってごみを減らそう!
②生ごみを減量作戦(リデュース)
・食べ物を買うときは必要な分だけ買おう!
・賞味期限・消費期限をチェックしよう!
(食べ残し,買ったけれども使わないまま捨ててしまう食べ物がごみの量が増える大きな原因です。)
・ものは,こわれないように長く大切に使おう。
③捨てるの待って作戦(リユース)
・こわれたものでも修理して使えるものは使おう。
・自分が使わなくなったものでもバザーやフリーマーケットに出したり,リサイクルショップに持って行ったりすると,他の人が使えるかも。
④ごみ分別作戦(リサイクル)
・ごみを分別して捨てよう!ペットボトル,ビン,カンは中を洗って捨てよう!
(ごみの分別が,ごみのリサイクルにつながります。ペットボトル,ビン,カンの中に残っているものがくさるとすごいにおいがするので,中を洗って捨てよう。)
・エコマーク,Rマークがついているものを選んで使おう。
(リサイクルされた製品を使うと,環境にやさしいよ。)
②子どもアクションプランを和歌山市報にのせてもらって広報しよう。
続いて,自分たちで考えた「子どもアクションプラン」をできるだけたくさんの人に伝えるにはどのような方法があるか考えました。
ポスターをはる,家の人に伝える,アクションプランPR動画をつくるなど,たくさんの意見が出ましたが,和歌山市報に自分たちの取り組みをのせてもらうことで,たくさんの人たちに知ってもらえるのではないかという意見に多くの子どもが賛成し,和歌山市環境部の方にお願いして,和歌山市報に自分たちの取り組みをのせてもらうことにしました。
平成29年度2月号の和歌山市報「りりくる通信」に取り組みをのせてもらうことに決まっています。
③単元のその後
「社会的事象を考察する学習過程からよりよい社会の構想へとつながる学習過程」を経て,自分たちが考えたごみ減量子どもアクションプランを和歌山市民に広報するというかたちで単元を終えた子どもたちでしたが,子どもたちのアクションプランは,単元後も続いています。ごみの内訳として「生ごみ」が多いことを知っている子どもたちの中には,毎日のように給食時間に「食べ残しをしないようにしよう」ということを呼びかける子どもがいます。
また,学校内にコンポストを設置することで,「生ごみ」を堆肥にして,再利用できるようにしようと計画している子どももいます。
さらには,「紙ごみが多いことを何とかしたい」と考え,単元後も「各クラスに紙の回収箱を設置する計画」をしている子もいます。
このような姿は社会科の授業内に留まらず,「社会的事象を考察し,よりよい社会を構想すること」を実生活の中で行っている姿といえると思います。このように,実社会で生かすことができる資質・能力及び態度を身につけさせることができるような学習をこれからも実現できるようにしたいと考えています。