和歌山大学教育学部附属小学校
 
ICT活用授業研究会2013


学びをデザインする子どもたち ~個をつなぐICT活用~
 
校長挨拶
 平成26年1月31日(金),第7回ICT活用授業研究会を開催しました。年度末のご多忙の時期にもかかわらず,地元和歌山県はもとより,他府県からの参加も含めて,約60名の先生方にご参加いただくことができました。厚く御礼申し上げます。
 当日は,国語科2つ,複式・理科,家庭科の4つの公開授業(研究授業)と研究協議会を実施し,全体会では,この間一貫してご指導いただいてきた野中陽一先生(横浜国立大学教育人間学部附属教育デザインセンター教授)と豊田充崇先生(和歌山大学教育学部附属教育実践総合センター准教授)による対談「学びをデザインする子どもたちー個をつなぐICT活用ー」を行い,活発な議論と交流が行われました。
 ICT活用をめぐっては,かつてのコンピュータ教室での集合的な学習の時代から,教室での電子黒板,実物投影機,プロジェクター,あるいはデジタル教科書などのコンテンツを使って行う教師の「教え」の改善,さらには,タブレット・パソコンなどを子どもの学びのツール(道具)として用いた「学び」の充実へと実践がシフトしてきているように思いますが,いずれにしても,ICT活用が自己目的になるのではなく,子どもの「学びの質」を高めることにつながっていくことが大切だと考えています。
 教室のなかでの日常的なICT活用によって,教室のなかの様々な「境界」(Border)を越えて,教室の仲間の思考や表現をより深く,スピーディに理解し,交流したり,地域の具体的なモノ・コト・人とつながったり,グローバルな世界とコミュニケーションを深めたりすることによって,「学びの質」を保障する可能性が広がっていくのです。
 そうした点で,私たち附属小学校でも,ICT活用の教育的可能性をどのように拓き,発展させていくかについて,引き続き追究していきたいと考えております。
 最後に,お忙しいなかにもかかわらず,対談をお引き受け下さった野中先生,豊田先生を初め,指導助言をお引き受けいただいた先生方,及び,ご参加いただきました先生方に,衷心より御礼を申し上げます。
 本当にありがとうございました。

平成26年年2月15日

和歌山大学教育学部附属小学校 校長 船越 勝


 
公開授業の様子
2年C組 国語~友だち・家ぞく“きらり”作文を書こう~
授業者:小杉栄樹
  
 「iPadmini」と実物投影機(エルモ)を活用しました。単元を通して,子どもたちに付けたい力を明確化し,「iPadmini」の「機動性」「操作性」「活用性」の三観点からその利点を考え,カメラ機能を使用し,自分たちで撮影した写真をもとに,「友だちや家ぞくのきらり(ステキなところ)」を「きらり作文」に書きました。実物投影機(エルモ)については,子どもたちのワークシートをホワイトボードに映し出しました。その際,文章のステキな部分に丸印をつけてあげるなど,クラス全体で見えるように評価し,共有化するために使用しました。「iPadmini」や「実物投影機」などICT機器は,子どもたちの学習意欲を高め,自分の考えをまとめ,定着させ,さらには発信する中で,「思考力・論理力・判断力」を育てる大変有効な手段であると考えます。
  

3年A組 国語 「作ろう!3A三十人一首」 
授業者:宮脇 隼 

  
 協議会では,子どもたちが実物投影機に慣れていて,全員が必ず使用するのではなく,使いたい子どもが実物投影機・プロジェクタ・ノートパソコンを使用し,
自分で発表方法を選択する余地をもたせていたところがよかったと評価していただきました。
 しかし,実物投影機とプロジェクタを使うことで,一人一人の考えがクラス全体に伝えやすいのですが,子どもたちの話し方や聞き方の部分の指導がもっと必要だとご助言いただきました。みんなに伝えたい部分を大きく映しながら話したり,色ペンなどで分かりやすくしたりするなど,実物投影機をさらに有効活用する発表の仕方を指導する必要があったと考えました。
  


3・4年F組 複式理科 3年「電気で明かりをつけよう」
4年「ものの温度と体積」 
授業者:中西 大

  
 3年生は,オリジナルスイッチの設計図を,実物投影機で映して情報を共有しました。 また,市販のスイッチのの構造を大きく拡大して映し,オリジナルスイッチづくりのヒントとして活用しました。小さなスイッチの構造を見るため,大きく映し出すことで,接点が金属でできていることを全体で確認できたと思います。
 4年生は,実験結果を振り返り,全体に提示するために多機能携帯端末を活用しました。実験時に撮った写真により,結果を明確に示すことができたと思います。子どもの中には,自分の考察で証拠を示すために,写真をトリミングして準備したり,再実験の様子も写真で記録しようと進んでICTを活用している姿が見られました。
 協議会では,複式の授業ということもあり,「実際には一学年8人という複式学級の環境はない」ということや,教師の立ち位置・発表時や授業のまとめの段階での入り方の工夫などを挙げていただきました。ICT関連では,プロジェクタ(スクリーン)の配置に改善の余地があること,子どもたちが自然な形でICT機器を使っていること,ICT活用により実験結果が明確に確認できたことを挙げていただきました。
  

6年B組 家庭 ~地球にやさしく,人にやさしく~
授業者:藤原ゆうこ
  
 自分たちが考え た“冬に快適な住まい”の模型をもとに発表し,交流する場面では,多機能携帯端末のビデオ機能を活用しました。ここでは,ICTを活用することによって,立体的な“住まい”をよりわかりやすく多面的に仲間に伝えることができました。
 また,実物投影機で住まいの模型の温度変化を調べる実験の結果を映し出しました。このように活用することで,子どもたちが個々の考えを共有させることにつながったと考えています。
  

 
全体会(対談)の様子
  
 横浜国立大学の野中陽一先生と和歌山大学の豊田充崇先生のお二人に対談していただき,特に3つのご示唆をいただきました。

 ①教室に設置するところからはじめている
 ②2つの画面に映し出す工夫をしている
 ③情報活用の実践力を育てていってほしい

 まず,ICT機器が活用する教室に常設している点を評価していただきました。使おうとするときに設置をしないといけない環境では子どもたちも先生も一気に使用頻度が下がるそうです。本校でも普通教室に常設されるようになってから活用が活発になりました。
 また,1つの画面では同時に二つのものを見ることはできません。しかし,2つの画面があれば,問題提起と子どもの考えを同時に映し出すことができます。
 最後に,課題としては,子どもたちの情報活用の実践力を育てていくことをあげていただきました。教科の目標を達成するためだけではなく,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力も培っていかなければいけないということです。
 本校では,継続して教科の目標を達成するための効果的なICT活用を研究してまいりますが,情報活用の実践力を高めていくような取り組みも力を入れていきたいと思います。
 皆様からいただいたご意見をもとに,これからも主体的な学びの成立をめざして研究を続けていきます。今後とも,和歌山大学教育学部附属小学校のICT研究をよろしくお願いします。

【ICT研究部長 馬場敦義】

 

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