授業・研究活動社会科

校内研「天皇を中心とした政治」

第6学年社会科「天皇を中心とした政治」
授業者:西川 恭矢
指導案:こちら(PDF)

授業づくりの「しかけ」と子どもの探究
◎本時における授業づくりの「しかけ」
 本時では以下に挙げる2点を主なしかけとして用いた。どちらも子どもの思考を可視化し,対話を活性化させることを目的とした。

①スケール図の活用
 スケール図を活用することで「○○という思いも分かるけど,やっぱり□□が大切だと思う。」等の子どもの多角的な立場からの思考を表現させることができる。さまざまな立場から歴史的事象を捉えられるようにする。

スケール図で考えの違いを可視化

②明確な違いがある資料をもとにした対話
 子どもに読み取らせる資料には,それぞれ明確な「違い」を設定する。この「違い」(ズレ)が子どもの伝える必然性,聞く必然性になると考える。考えの違う他者と対話する場面を設定することで省察性を働かせながら学習に取り組めるようにする。

◎本時における教師による評価
 本時は,以下の流れで授業を展開した。

①学習問題を設定する
②学習問題に対する考えを書いて交流する

③用意された資料を個人で読み取る
④各グループで学習問題に対する答えを考える
⑤全体で交流する

⑥学習問題に対する考えを書く

協議会より
「各グループで意見をまとめる必要はなかったのではないか」という意見が出された。授業者としても,今回のように絶対解がない問いを,ひとつの考えにまとめる必要性については悩んだところではある。しかし,グループで考えをひとつにするという活動が「自分の思いを伝えたら終わり」ではなく「あの子の意見も聞きたい」という対話の必然性を生むと考えた。今回はこのようなしかけが効果的であったと考える。

 子どもの対話を授業の中核に位置付けた場合,学びのコーディネーターとしての教師の役割はより重要になってくる。歴史の授業である以上,過去に実際にあったことを否定的に捉えるだけでは授業の目標を達成したとは言えない。今回の場合,「聖武天皇は民衆の思いを無視して大仏を造った」という一面的な理解に留まるのではなく「確かに民衆の思いは反映されていない部分はあったかもしれないが,ではどのような対策ができたのか?聖武天皇が仏教の力によって国を治めようとしたことも大切な歴史の1ページであって,このような事実からこれからの時代をどうしていくべきか考えていかなければならい。」のように多角的な立場から考えさせる必要がある。民衆の立場の資料を担当した子どもは,大仏づくりを否定的な側面のみで捉える割合が多かった。これは,聖武天皇や行基に比べ,民衆と自分をつなげて考えやすく「自分事」にすることが容易であるためと考えられる。全体で話し合う場面でもH児やJ児のように民衆の立場に立って考えてはいるものの,大仏づくりが民衆に与えた影響を肯定的に捉えている子どもの発言をいかに生かすことができるか。一面的な見方しかできていない子どもを「立ち止まらせる時間」をいかにしてつくっていくかを考えていく必要がある。
 そのためには,授業前や授業の中で子どもの学びを想定したり,みとったりする力を高めていく必要がある。教師がどのように指導するかではなく,子どもがどのように学ぶかに視点を置いた授業研究を進めていきたい。

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