算数科

算数科提案授業2011

長さ
授業者:宇田智津

《本授業の場面分け》
①場面:本時の導入から課題1「どちらが近いのかな?ありさんの歩いた長さをしらべよう」を提示し,長さもたし算ができることを確かめさせる場面

 生活体験の話から入り,ありさんがキャンディに向かう2つのコース(青コース=直線コース・ピンクコース=曲がり角有りコース)を提示し,どちらが近いかを問う。
 子どもたちからは,折れ曲がっている線をまっすぐにのばすこと,青コースの近くにあわせてみることが出された。
 「たしざん」の声もあったので,それぞれのコースの長さ(青コース5㎝ピンクコース3㎝と4㎝)を提示し「どんなたし算したらいいんやろ。」と問いかけ,3+4を出させ,長さもたし算ができることを確かめた。

②場面:課題2「どのコースが近いのかな?ありさんの歩いた長さをしらべよう」を提示し,障害物を避けてキャンディに向かおうとするありさん3びきのコースでどれが近いかを予想させる場面
 「別のコース」と伝え,真ん中にキャンディが見え,3方向にありがいるが,草むら部分にコースを隠されているものを提示した。ここでの発問は「今日はありさんの歩いた道をはかってほしい。ぱっとみてどのありさんが一番近いか考えてよ。」子どもたちの反応が薄かったので,草で隠されていることを伝え3つのコースを見せた。 そこでは「どのコースが近いでしょう。」「どうして。」と問いかけた。子どもたちからは,「ウ。まがっているから」「たし算したらいい。」「まずさしではかってたし算したらいいと思う。」それを受けて「先生,調べてきました。」とプリントを渡し,「ペアでどのコースが近いか相談してきめてください。できたら理由も考えてね。」という指示を出してペア学習に入った。ワークシートはペアで1枚。

③場面:課題2「どのコースが近いのかな?ありさんの歩いた長さをしらべよう」についてペアで話し合って考える場面(10分)

 「10分ぐらいでできるかな。」とおおよその時間を伝えてペア活動に入った。㎝を㎜に直して計算するグループ,㎝部分をたし算するグループ,誤って㎝部分と㎜部分をたし算しているグループが見られた。机間指導の途中,「あと3分くらいかな。」と残り時間を伝えた。8つのグループにミニ黒板へ計算を書くことを指示 し,書き終えたものを黒板に貼った。

④場面:課題2「どのコースが近いのかな?ありさんの歩いた長さをしらべよう」の考えを全体で伝え合う場面
 ④-1 消しゴムを片付けさせてから「どれがやりやすかった?」と問うた。教師 の予想に反して「ア(8㎝2㎜と7㎜)です。」の答えがもどってきたので「アのコースが簡単だったと思った人。」と問いかけて,ウ(4㎝と5㎝)のコースを出させ,どうしてかを問うた。子どもたちからは,「㎝だけのたし算だから。」「(数字のところへ)㎝入れてる。」と数字のあとに㎝をつけて計算しているペアのミニ黒板についての指摘があったので「どっち(㎝をつけての計算かつけないでの計算か)のたし算でやった。」と問うたがあまり理解できていない様子であった。答えの単位が㎝であることを押さえてアに着目させた。

 ④-2 「4たす5みたいにたし算した。82たす7は89(ちひろ・けんと)」「1㎝は10㎜で8㎝は80㎜」「1㎝は10㎜やから」という発言を受けて,「全部㎜にしてるんやな。」とといかけたが,けいすけ・りょうこは,「8㎝たす2㎜たす7㎜は89㎜(けいすけ・りょうこ)」と発言した。ももかは「たぶんやりたいやりかたわかる。」と共感を示していた。その後,「ふたり(りょうこ・けいすけ)なにやりたかったかわかる?」と問いかけ,単位がふたつあることに気づかせたことで,ももかが「8㎝を㎜にせなあかんから。」と発言し「80㎜」を導き出した。

 ④-3 イは2つのやり方があることを伝え,「6㎝+3㎝2㎜は9㎝2㎜」となること,「32+6=38㎜」となることをミニ黒板に子どもたちが書いたもので確かめた。

⑤場面:出された考えから長さのたし算では単位をそろえる必要があることに気づかせていく場面
 黒板に掲示した8つの計算方法を見せ,「仲間に分けられる?」と問うた。子ども たちからは,「全部たし算。」「イとウで㎝って書いた方が仲間で,もう一つの方が仲間」「数字だけでしてる。」などが出され「㎝㎜を書いているたしざんと書いていないたし算に分かれました。」と伝え「確かめてみてください。」と投げかけた。子どもたちからは「意味わからなくなってきた。」「2㎜が混ざってるからかしくなってる。」「そこのペアはたぶん6㎝のこと6㎜と間違ってるんちゃう。」などの発言が聞かれた。授業者は,最後に「数字だけだと㎝か㎜かわかりにくいんやな。全部㎜にそろえるのか,㎝・㎜書いて計算した方がやりやすいのかどっちやろ?」と問いかけ,最後にそれを書かせた。

⑥場面: ⑥場面:単位をそろえる計算と㎝・㎜を書き込んで計算する方法のどちらがやりやすいかについて自分の考えを書いた場面
 授業者の意図する問いかけの意味を捉え切れなかった子もおり,「なんにもない方=(単位をつけないで計算する方)がやりやすい。」といった感想もいくつかあった。

【提案授業1の協議会で得られた共有事項】
①聴き合い・学び合える学級風土づくり
 ・学級全体として考えが収束していっているときにでも,「ちがう。」という声が出せ,それに耳を傾けられるような学級風土を目指していく。
②算数科における協同的な学び
 ・机間指導は子どもを鍛える場でもある。「なぜこうなったの?」と問い,それをそのまま文章化させるなどの支援を大切にしていく。
 ・ペア学習,グループ学習が型にはまってマンネリ化する危険性はないか。個人思考の場の確保や全体での協同的な学びについてその意義を問い直す必要がある。
③焦点化における2つのアプローチ
 ・教師の発問の言葉も吟味が必要。(発問の精選。言葉の精選)
④自己の変容へとつながる「吟味」
 ・全然わからなかったことがわかるという変容,わかっていたことを違う見方でわかるようになるという変容がある。
 ・考えの変容を確かめられるような板書の工夫が必要。

【協議会後のアンケートより】
・子どもの言葉で,予想される児童の反応を想起しておきたい。
・(シングルではなくダブル以上で)焦点化の条件設定が必要であることを考えさせられました。
・焦点化において,今回,子どもの言葉におきかえるということを学ばせてもらった。「子どもは子どもの言葉でしか理解しない。」ということを授業づくりに生かしていきたいと思う。
・聴き合い・学び合う学級風土のポイントとして,頭ではわかっているんだけれど,うまく言えない,論理的に言えていない友達の考えを「たぶん・・・と言いたいんだ。」とつ なげて深めていける学級風土というのに納得です。
・日々の授業の場面で子どもの発言や表現の仕方を意識して丁寧に全体へとかえしてあげることの大切さを感じました。

〔文責:須佐〕

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