「その子らしさ」を生かす社会科
西川 恭矢
1.社会科は魅力的な教科なのに・・・
「基本的人権の尊重?冠位十二階?難しいこといっぱい覚えなあかんから楽しくなさそうー。」4月当初,A児は社会科に対する率直な思いを語ってくれました。A児に限らず多くの子供たちが,「6年生の社会科=暗記科目」という印象を抱いています。「他教科に比べ,自分の生活経験をもとに考えを深めていける社会科こそ,その魅力を実感させたい!」そのような思いで,日々実践に取り組んでいます。
2.「その子らしさ」を生かすための取り組み
子供たちが社会科の魅力を実感できるようにするため「その子らしさを生かす社会科」をテーマに研究に取り組んでいます。このような学びを実現するために,「①自分らしい問いをもって,考えを深めていくために社会的事象と十分に関われる時間を設定すること」「②その子らしい見方・考え方が発揮されるよう,人との出会いを単元に位置づけること」「③子供たちの学びの様子を座席表に記録し,授業に生かすこと」が必要であると考えています。ここでは,座席表への記録を中心に今年度の学習を紹介します。
3.単元構想と子供のみとり
税金を題材にして,政治について考える単元を構想しました。本単元では,なかなか身近に感じられない政治を自身の生活に引き寄せ,様々な社会問題について自分なりの考えをもてる姿を期待しました。座席表へは,各授業の中で子供たちがどのような問題意識をもち,どのような考えを創り出しているのかを記録していきます。
授業における子供の発言や振り返りをもとに,教師のみとりや子供に対する期待や願いを記入しています。教材のねらいだけでなく,子供たちの思いも加味することで,「教えたい」と「学びたい」を近づけることができると考えています。
4.単元を通して子供の学びを追う
単元当初,政治に対しての不信感を口にしていたB児は,調べ活動を通して政治が果たす役割について考えを深めていきました。中でも,ゲストティーチャーからの「政策の実現には予算がかかる」という話が印象に残ったようで,ノートには「みんなを幸せにするためにはお金がかかる。みんなのために税金を上げるしかないのか?」といった記述が見られました。この言葉をもとに学習問題を設定していきました。
全体の話し合いでは,祖母と同居するC児の意見と会社を経営する父との対話を根拠にしたD児の意見が中心となって学習が展開されていきました。B児はこの学習を次のように振り返っています。
Dくんの「法人税が上がると,日本の会社が外国へ行く」という意見と,Cちゃんの「税金はギブ&テイク」という意見がすごく心に残っている。どっちも正しいと思うからすごく悩む。~中略~ 税金の使い方を決めるのは,日本をどういう国にしたいかを決めるということ。とりあえず選挙へ行って自分の願いも知ってもらうことが大切だと思う
5.目の前の子供の姿に迫り続ける
最後に,4月当初は社会科に対するマイナスな思いを語っていたA児の単元の振り返りを紹介します。
初めは政治とかに全く興味がありませんでした。でも最近はお父さんともよく政治の話をするようになりました。~中略~ 少し社会のおもしろさにも気付けた気がします。これからもたくさん調べて,みんなと話し合っていきたいです。
子供たちのすべてを理解し,学習に生かすことはできませんが,一人でも多くの子供が「自分らしさ」を発揮しながら学びを進めていけるよう,これからもその子らしい考えや思いを捉えていきたいです。
その子らしい考えをどのように引き出し,全体の学びに生かしていけるのか。共に考えてくださる方はぜひ,ご連絡ください!
#個別最適化,学習の個性化,個のみとり