「問題を見いだす」ための大事なこと
理科 久保 文人
理科の授業の場面で,「さあ,問題を見つけましょう。」と子供たちに指示した経験はないでしょうか。私は何度もあります。しかし,問題は「見つけましょう。」と言われて見つけるものではなく,自然発生的に顕在化されるものではないか,と考えるようになりました。学習指導要領では,理科の始まりである3年生から問題を見いだす力の育成が位置付けられています。今回,子供自ら問題を見いだす姿を目指した4年生の実践を紹介します。
1.キーワード「たい」
子供が問題を見いだすための大切なキーワードは「たい」だと考えています。例えば,理科における「たい」には,やってみたい,知りたい,調べたい,解決したいなどがあります。つまり,「たい」とは意欲をさします。子供の意欲が高まるからこそ,子供が問題を見いだすようになると考えています。
2.4年生「電気の働き」の導入
私は,子供が「たい」を感じるような単元の導入にするために,教室の後ろに大きな坂道を設置しました(図1)。この坂道に,乾電池1個をつないだモーターカーを走らせました(図2)。


子供たちは,楽しそうにモーターカーを走らせていました。ところが,モーターカーが坂道を越えないことに気付き始めます。ある程度,活動時間をとった後に,ノートに自分の考えを書かせました。考えとは,発見したこと,モヤモヤしたこと,やってみたいことです。その後,自分の考えを伝え合う場をもちました(図3)。

例えば,次のような意見が出ました。「モーターカーが逆走してしまった。」「坂道を越したいけど越せなかった。どうすれば越せるのかな。」このような話し合いを経て,子供たちと単元の課題(ゴール)を設定しました。単元の目標は「全員のモーターカーがまっすぐ前に走り,坂道を越すことができる」です。
3.見いだした学習問題
単元の課題の設定後,子供たちに「単元の課題を解決するためにどのようなことに取り組んでいきたいですか。」と尋ねました。ここで,子供たちがようやく学習問題を顕在化させていきました。子供たちの設定した学習問題とそのプロセスは以下のようになりました。
①モーターカーが逆走してしまった。
⇒(問)どうすれば逆走しなくなるのだろうか。
②坂道を越すためにはどうすればいいのだろう。
→ 乾電池を2個にしてみよう。
→ どんなふうにつないだらいいのかな。
⇒(問)乾電池2個とモーターをどのようにつなげばいいのだろうか
4.終わりに
今回,子供たちは「坂道を越したい」という意欲がきっかけとなり,自ら問題を見いだす姿につながっていったといえます。つまり,教師の役割は「たい」を引き出すような場をつくることだといえるのではないでしょうか。問題は見いださせるものではなく,子供が見いだしていくものだと考えています。ただし,理科には様々な分野があります。今回のような導入が当てはまる場合もあれば,そうでない場合もあるでしょう。どのような導入が適切かは吟味が必要です。
「さあ,問題を見つけましょう。」と子供たちに直接投げかけるのではなく,子供たちが「たい」をもてるような場をつくることを意識してみませんか。

生徒エージェンシーの発揮につながる資質・能力の育成するために,理科ではどのような学びを実現していけばよいのかを探っています。ぜひ交流しましょう。いつでもご連絡ください。
#問題を見いだす,導入,4年生「電気の働き」