動物園ハッピー大作戦!!
総合的な学習の時間 中谷 栄作
1.学びを起こすために十分な体験を
和歌山城公園動物園は,子供たちがこれまで見学に行ったり,ごみ拾いに行ったりして身近な場所になっています。算数科「長さ」の単元では,メジャーを使う課題を「動物園で動物の大きさを測定すること」に位置付け,子供たちが動物に触れる場面を作ることで,動物への関心を高めました。「また行きたい」という声が「飼育員さんにもっと聞きたい」という声になるまで,繰り返し動物園に通いました。
そうすることで動物や動物園への愛着が深まり,飼育員さんの思いに出合い,「動物たちにおもちゃがなくて困っている」ことを知った時,本気の学びが起こりました。子供たちは,動物たちが喜んで遊ぶ姿やお客さんが喜んでくれる様子を思い描きながら,おもちゃ作り等の活動に取り組みました。
2.伴走者と繰り返し関わりながら試行錯誤ができる環境を整える
おもちゃ作り前半では,動物が反応しなかったり,安全上の理由で動物園から断られたりする課題に直面しました。また,おもちゃ作りをしばらくした後,獣医師に来ていただいてお話を聞かせてもらいました。「動物のことをよく調べないでおもちゃを作って与えるようでは,動物の命を大切にしているとは言えない。もっと動物たちのことを調べて,どうすれば幸せか考えて作ってほしい。」と厳しい意見をいただきました。
すると,子供たちは「かわいい」だけでなく,動物の立場に立って思いやりながら作るようになりました。一つ作っては「動物園に聞きに行きたい」と言って,お昼休みや放課後におもちゃを持って動物園に行き,飼育員さんたちにアドバイスをもらいながら,おもちゃを完成させました。結果以上にこの過程で育つ力が重要であると捉えて学習を進めていきました。(図1)
3.達成感が貢献したい気持ちにつながる
おもちゃ作り後半では,おもちゃの説明会を行い,最終点検をするところからスタートしました。自分のおもちゃについて説明する中で,飼育員さんの視点に立てている子が多くいました。
その後,おもちゃを動物園まで運び,動物たちにプレゼントしました。対象の動物によって使ってもらえるまでの時間に大きな差があり,早いと5分でしたが,長いと3日かかり,後日見に行ってやっと使っているところが見られました。それを待っている間,動物たちに「なぜ使ってくれないのか」と苛立つ子供も出るだろうと予想していました。しかし,子供たちは「触ってくれるといいな,きっと慣れるまで時間がかかるんだよね。」と言いながら待つことができていました。その様子から,動物たちに自分たちの思いを押し付けるのではなく,動物たちの立場に立ち,愛情を込めて学べていることが読み取れました。動物たちがおもちゃを使った瞬間には,チームを越えてこえて喜び合い,笑顔が達成感で輝いていました。
振り返りでは,自分たちは誰を幸せにできたのかを話し合いました。「動物たちのために始めたことが,自分もみんなもハッピーにできている。」「これからも何かするときには,誰かのためにと考えたい。」という意見が出てきました。児童が作った「うれしいメーター」(図2)で成果を共有し,これからもいろんなハッピーを作っていこうと話し合いました。達成感が貢献することの良さにつながり,また,自分たちのもつ可能性の大きさを実感できました。
ESDの活動を通して,「価値観の変容・行動の変革」を起こせるような学び作り,社会づくりに取り組んでいます。子供を中心に多様な人が関わり合い,変わり合うことはとてもおもしろいことです。よかったら一緒に考えてみませんか?
#本気の学び,試行錯誤できる環境,達成感