授業者:川村 繁博
3年生「何倍でしょう」 4年生「何倍でしょう」
「具体から抽象へ」
算数科では,よく「具体から抽象へ」という言葉が用いられます。しかし,普段の教室での子どもたちの様子を見ていると,突然,抽象化された数や式を見ても「何がなんだか分からない。」という,心のつぶやきが聞こえてきそうです。
そこで,今回の授業では,具体から抽象化に至るまでの子どもたちの思考過程を具体物の操作活動や絵・図などを活用して表現させていこうと考えました。活動を通して,場面を子どもたちが自分の手で整理して考えることで倍関係に目を向けることができればと考えました。
3年生の問題は,金・銀・銅の宝箱から1つを選び,中に入った宝石をもらうというものです。子どもたちには,宝箱の中は見えません。子どもたちは,中に入っている宝石の数を知りたいと話し始めます。見えないからこそ知りたい,そんな好奇心が子どもの探求心をくすぐります。
そこで,手がかりとなる条件を提示します。
『宝箱に入っている宝石の数は…。銀には,金の2倍。銅には,銀の3倍 。』です。一見簡単なこの条件も,テキストのままではイメージがもてません。子どもたちは,絵を用いたり,仮の数を当てはめたりして考えを深めていきます。
4年生の問題は,提示された砂山は,しげ君・妹・父・母の4人のうち,だれが作ったものかをテープ図とテキストを手がかりにしてひもといていくというものです。
初めに与えた手がかりは,テープ図のみ。子どもたちは,勿論,必要な情報を様々に要求してきます。
そこで次の条件を提示しました。『妹の山は,しげ君の2倍の高さ。母の山は,妹の3倍の高さ。』これで,4人が作った砂山の高さの関係は明らかとなります。
そこで,すかさず「4人の砂山の高さを求めましょう。君は,何人まで求められる?」と投げかけます。
もちろん,どれか1つでも,山の高さが分かっていなければ問題は解けません。
子どもたちに,知りたい砂山の高さはどれかをたずねます。この問いかけにより,子どもたちは,全ての砂山の高さを知るには,しげ君の砂山の高さが必要であることに気づきました。そこで母の砂山の高さを子どもたちに伝えます。一瞬,とまどった子どもたちでしたが,すぐにテープ図に気づきます。そして,倍関係を捉え,見事に4人の砂山の高さを求めることができました。
初めから,具体的な個数や高さを提示してしまうと,子どもたちは,単純に数を式に当てはめて答えを求めようとします。そこに,事象や現象,量感がしっかりと伴っていれば問題はないのですが,多くの子どもたちは単に計算して求めるという作業になってしまいがちです。そこに考えることの楽しさや,学びの深まりはあるのだろうかと考えます。
あえて条件不備の問題を提示することによって,子どもたちの知的好奇心や探求心を揺さぶること,誰もが問題場面をしっかりととらえともに学び探究するする姿を目指して,授業に向かいました。
授業の終末,宝箱を開けて数を確かめて歓喜する3年生の姿。4つの砂山の高さを求めて自慢げな子どもたちの姿がありました。